働き方改革

働き方改革関連法で36協定はどう変わる?長時間労働是正のポイントを分かりやすく解説

働き方改革が解決すべき重要課題で、社会問題ともなっている長時間労働の是正に向け、改正労働基準法が参院本会議で成立、2019年4月1日より施行されます。時間外労働に罰則付の上限規制が設けられた改正労働基準法は、過労死の要因となる長時間労働の抑止力として、大きな期待が寄せられているといえるでしょう。

しかし、法改正によって従来の36協定はどう変わるのか?そもそも今後も36協定を結ぶ必要があるのか?改正内容を把握できずに、頭を悩ませているマネジメント層も多いのではないでしょうか?

そこで本記事では、改正労働基準法と36協定の関係性とともに、法改正で時間外労働がどう変わるのかを分かりやすく解説し、長時間労働の是正に有効なツールも紹介していきます。

働き方改革とは?

働き方改革とは、少子高齢化の進行で減少を続ける労働人口、低迷する労働生産性、社会問題化している長時間労働など、日本が抱える問題を解決するため、政府主導で働き方がどうあるべきかを改革していく取り組みです。

2017年3月28日に決定された働き方改革実行計画では、賃金などの処遇改善、時間・場所などの労働制約克服、キャリアの構築という3つを課題に挙げ、それぞれを9つのテーマに分類。以降、それに沿った関連法案の策定・整備が進められ、順次施行に移されています。

そのなかでもっとも重要な課題といえるのが長時間労働の是正であり、その本丸ともいえるのが今回の改正労働基準法および、俗にいわれる36協定なのです。

働き方改革とはなにか?働き方はどう変わるのか?わかりやすく解説1980年代以降、OEDC加盟国中の20位前後に定着してしまった日本の労働生産性は、経済のグローバル化が加速するにつれて、その低迷ぶりが...

36協定とは?


36協定とは、労働基準法第36条を根拠にした俗称であり、正式には「時間外・休日労働に関する協定届」のことを意味します。

労働基準法では、1日8時間、1週間で40時間という法定労働時間が定められており、この上限を超えた「時間外労働」は禁止されています。しかし、時間外労働を完全に禁止してしまうと業務が滞ってしまうため、労使合意のもとに協定を結ぶという条件付きで、時間外労働を認める労働基準法第36条が定められたのです。

この場合の労使とは、使用者と労働者の過半数を占める「労働組合の代表者」もしくは「代表する者」となっており、両者が協議のうえで時間外労働の延長時間を定め、協定届を労働基準監督署に提出しなければなりません。

尚、この時間外労働の延長時間には上限があり、一般的には1か月で45時間、1年間で360時間とされているほか、時間外労働に対する割増賃金の支払いが求められています。

36協定の特別条項

36協定を労使間で結んでも、一部業種の繁忙期など、時間外労働の延長時間を36協定の上限までに収めるのが難しいケースもあります。こうした特別な事情を考慮し、36協定で「特別条項付き協定」を結べば、1年間の半分を超えない期間に限り、上限を超えて労働時間を延長できるようにされています。

もちろん、特別条項での時間外労働の延長時間に関しても労使間の合意が必要ですが、上限が設けられているわけではありません。つまり、労使間の合意さえあれば何時間でも時間外労働を延長できてしまいます。事実、ある病院では特別条項の時間外労働の延長時間を、1か月300時間に定めていた例もあるようです。

現行の36協定の問題点

法定労働時間を超える時間外労働をさせるために必須の36協定は、労働現場の状況も加味し、労働者の残業時間を適切な範囲に収めるのが目的だったと思われます。しかし、現行の36協定はさまざまな問題を抱えており、逆に長時間労働の温床になっていたともいえるでしょう。

そのひとつには、36協定で定められた時間外労働の上限に、法的な強制力がないことが挙げられます。このため、行政官庁が36協定違反に対してできることは、助言・監督指導にとどまるのが現実です。

もうひとつは、特別条項における時間外労働の延長に上限が設けられていないことです。上述した病院の例からも分かるように、事実上、会社は労働者に無制限の時間外労働を課すことができてしまいます。

現行の36協定では、過重労働による精神疾患や過労死など、社会問題化している長時間労働を抑止するのは非常に困難だといわざるを得ないでしょう。

改正労働基準法の内容


長時間労働の是正を課題に掲げる働き方改革関連法に、36協定の問題点を解決すべく、労働基準法の改正が含まれたのはこのためであり、2019年4月1日の法施行が本丸だといわれる理由でもあります。

では、改正労働基準法ではなにが変更・改正されたのか?主な内容を具体的に解説してみましょう。

時間外労働の上限規制

これまで基準に過ぎなかった時間外労働に明確な上限を設けたうえで法定化し、違反に対する罰則を設定して強制力を持たせました。具体的には、時間外労働の上限が原則月45時間、年360時間までと法律で定められたのです。

改正労働基準法では、上限の設けられていなかった特別条項も法定化され、年720時間までを限度としたのがトピックだといえるでしょう。具体的な特別条項の内容は以下のとおりです。

  • 原則となる月45時間の時間外労働を延長できるのは6回まで
  • 休日労働を含んだ1か月の時間外労働は100時間未満
  • 休日労働を含んだ複数月の時間外労働の平均は80時間以内

つまり、100時間未満まで残業した月があれば、その前後の月の時間外労働は60時間を超えられません。複数月は2〜6か月までの連続した月を意味するため、月ごとに100時間 – 60時間 – 100時間などという時間外労働もできないのです。

中小企業への適用は2020年4月1日からと、1年間の猶予が認められているものの、時間外労働の上限規制に違反した場合は「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則が設けられました。

働き方改革で残業は減るのか?どうしたら残業を減らせる?日本での働き方につきまとう課題を解決し、長時間労働の是正やワークライフバランスの実現によって、日本全体の労働生産性を向上させることを目的...

月60時間を超える時間外労働の割増賃金見直し

労働基準法では、時間外労働に対する割増賃金の支払いが定められており、月60時間を超えた場合、雇用主は50%以上の割増賃金を上乗せして労働者に支払わなければなりません。しかし現行法では、中小企業に対する猶予措置が設けられており、月60時間を超えた場合の割増賃金は適用されていませんでした。

改正労働基準法ではこの猶予措置が撤廃され、2023年4月1日から、中小企業も月60時間を超えた時間外労働に50%以上の割増賃金を上乗せする必要があります。

これに違反して割増賃金を支払わなかった場合は「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則が設けられました。

年次有給休暇の確実な取得

改正労働基準法では、年次有給休暇の確実な取得も、雇用主の義務として法定化されました。具体的には、10日以上の年次有給休暇を保有する労働者に対し、最低5日間、有給休暇を取得させなければなりません。これは、雇用主が労働者の希望を踏まえ、時季を指定して取得させるのが原則です。

これに違反して労働者に有給休暇を取得させなかった場合は「30万円以下の罰金」という罰則が設けられました。

勤務間インターバル制度の創設

24時間365日の稼働を強いられる医療現場などでは、2交代・3交代制勤務が通常です。しかし、シフトによっては、勤務終了から次の勤務開始までの時間が充分に取れず、不規則な労働が心身に深刻な影響をおよぼすといわれています。

これを解消するため、勤務終了から次の勤務開始までのインターバルを11時間確保するという、勤務間インターバル制度が努力義務として創設されました。現時点では法定化されていないため、勤務間インターバル制度違反による罰則はありません。

看護師の働き方改革と勤務間インターバル制度を世界一分かりやすく解説日本の労働生産性を向上させるために、根本的な構造改革を推進する政府主導の取り組み「働き方改革」が、2019年4月1日に施行される働き方改...

副業ビギナーでは新しい働き方に関する最新ニュースを配信中!
登録はこちらから↓

友だち追加

36協定の変更点とは?


それでは、さまざまな変更・改正のあった労働基準法によって、現行の36協定は新たにどう変わるのでしょうか?

そもそも労働基準法では、法定労働時間を超える時間外労働は認めておらず、労働者に時間外労働をさせるための特例措置として、労使間の合意にもとづく36協定が存在します。法改正後もこの関係性は同じであり、2019年4月1日の法施行に向け、改正労働基準法に従った新たな36協定を労使間で結び、36協定届を提出しておかなければなりません。

具体的にどのような点が変更になったのか?解説してみましょう。

36協定届が新様式に

改正労働基準法によって、36協定届が新様式へ変更されました。原則となる上限時間外労働に関しては1枚目に、原則の上限を超える特別条項に関しては2枚目に記載する、2枚綴りになっています。

それぞれ1日、1か月、1年での延長時間を、法定労働時間を超える分、所定労働時間を超える分を記載しなければならず、割増賃金率も記載しなければなりません。

36協定の有効期限が1年間に

36協定には有効期限があり、届出書にも労使間の合意による有効期限を記載しなければなりませんでした。しかし、この有効期限には法律上の決まりは存在しておらず、企業の事情に応じて36協定の有効期限が異なっているのが現状でした。

法改正による新たな36協定では、この有効期限は1年間に限定されました。つまり、3か月は3年などの有効期限は選択できず、毎年、労使間の合意による36協定届を、労働基準監督署に提出しなければならなくなります。

36協定に記載すべき項目

現行の36協定届にも、時間外労働の延長時間とともに明記しなければならない項目があります。

  • 36協定の対象となる労働者の範囲
  • 有効期限
  • 労働時間の延長や休日労働をさせる場合の理由

新たな36協定届では、これに加え「省令で定める事項」も記載する必要があります。省令で定める事項とは、主に時間外労働を行う労働者に関するもので、具体的に以下の事項です。

  • 複数月の時間外労働の平均が80時間以内であること
  • 限度時間を超えて労働する場合の手続き
  • 限度時間を超えて労働する労働者の割増賃金率
  • 限度時間を超えて労働する労働者の健康確保措置

時間外労働上限規制の適用外とは?


改正労働基準法によって設けられた時間外労働の上限規制ですが、これの適用外となる業種もあります。具体的には、以下のような業種が時間外労働上限規制の適用外とされています。

  • 新たな技術、商品または役務の研究開発にかかわる業務
  • 工作物の建設などの事業
  • 自動車の運転業務
  • 医師
  • 厚労省の定める業務

上述した業種のうち、建設業・運送業・医師については法改正から5年間、厚労省の定める業務については3年間が上限規制の適用外とされ、現場の状況を考慮に入れながら、上限規制実現に向けて努力していく方針です。

各業界の働き方改革の取り組みについてはこちらの記事をご覧ください。

運送業の働き方改革までの猶予は?アクションプランとは?詳しく解説参院本会議で可決・成立した「働き方改革関連法案」の施行が2019年4月1日に決定し、日本の労働者が抱える課題の解決と労働生産性の向上を目...
「建設業働き方改革加速化プログラム」をわかりやすく解説!事例や解決策も賃金を含めた労働者の処遇改善、長時間労働是正などの労働制約の克服、キャリアの構築という、日本の労働者が抱える課題を解決するため、政府主導...

また、研究開発などとともに導入された、高度プロフェッショナル制度で定められた対象者も上限規制の適用外となります。ただし、これらの対象者には医師の面接指導が義務付けられており、違反した場合は「50万円以下の罰金」という罰則が設けられています。

労働時間の管理に有効な勤怠管理システム紹介


時間外労働に明確な上限規制が設けられたことで、特に、36協定の特別条項で定められた、限度時間を超えた労働の管理が複雑になったのは否めないでしょう。マネジメント層が法改正された36協定を把握して遵守するには、労働者の労働時間を正確に管理しなければなりません。

そのために有効なのが、初期費用を抑え、リーズナブルなランニングコストで運用できる、クラウド型勤怠管理システムです。

jinjer勤怠管理

jinjer勤怠管理は、GPS打刻などのさまざまな打刻方法に対応し、休暇管理・シフト管理・集計・統計・予実管理などの豊富な機能を持つ、クラウド型勤怠管理システムです。交通系ICカードやチャットツールを使った打刻、PC・スマートフォン・タブレットでのGPS打刻などに対応。テレワークを含むさまざまな働き方をする従業員の勤怠を、正確に管理できます。

勤怠データは集計・統計・分析が可能なため、従業員の平均残業時間を可視化できるなど、36協定遵守にも最適な勤怠管理システムだといえるでしょう。予実管理で人件費を最適化するのも可能です。

導入14万社超!働き方改革で推進される「テレワーク」は企業の成長に不可欠在宅勤務やモバイルワークの総称でもあるテレワークは、ライフステージの変化にあわせた柔軟な働き方を実現するものです。つまり、働き方改革が掲...

シュキーン

シュキーンは、交通系・電子マネー系ICカードでの打刻、スマートフォンやタブレットなどでのモバイル打刻に対応し、統計機能やシフト管理、休暇管理などで従業員のタイムマネジメントを実現する、クラウド型勤怠管理システムです。

総労働時間、総残業時間、平均労働時間など、集約された勤怠情報をもとに、従業員の労働状況をグラフィカルに表示することで瞬時に把握可能。部署ごと、シフトごとの並べ替えも自在にできるため、36協定へ遵守できているか、確認するにも最適な勤怠管理システムだといえます。

中小企業がとるべき働き方改革の施策とは。課題解決のサービスを紹介長時間労働の是正を目的に、時間外労働の罰則付き上限規制、有給取得義務化などを盛り込んだ働き方改革関連法が、2019年4月1日からいよいよ...

まとめ


これまで法的な規制のなかった時間外労働に、明確な上限を設けた改正労働基準法は、日本の労働者にとっても大きな前進だといえるものです。しかし、過労死ラインといわれる時間外労働が月80〜100時間といわれるなか、36協定の特別条項上限は月100時間にされてしまいました。長時間労働の是正のために、法改正が充分な効力を持つものだとはいえないことがおわかりでしょう。

一方、法的な規制で長時間労働の是正を推し進めることは必要ですが、労働生産性の向上によって、ムダな時間外労働を削減していくという意識を持つことこそが、今の日本にもっとも必要とされているのではないでしょうか?その意味において、賛否の多い高度プロフェッショナル制度の導入は、日本の労働構造そのものを変革するきっかけとなるのかもしれません。

働き方改革へ取り組む企業の現状とは?テーマ別成功事例を紹介過労死や過労自殺の要因ともなっている長時間労働の是正に向け、いよいよ改正労働基準法が2019年4月1日に施行されます。これにより、大企業...
[email protected]でお得最新情報配信中

[email protected]で最新の副業情報やお得な新サービスの情報を配信中!

友だち追加