働き方改革

教員の働き方改革はどうなる?長時間労働の実態と問題点を解説

長時間労働に罰則付き上限規制が設けられた「働き方改革関連法」の施行を間近に控え、働き方改革がいよいよ本格化します。猶予期間のあるなしにかかわらず、ほとんどすべての民間企業が働き方改革に対応しなければならないのに対し、法改正の適用があいまいなままにされている職種も存在します。公立校の教員などは、そのひとつとして挙げられるでしょう。

それでは、一般的に過重労働のイメージがない教員は、是正が必要なほどの長時間労働はしていないのでしょうか?もし、長時間労働の実態があるなら、その対策はどうなっているのでしょうか?意外に知られていない教員の働き方の実態とともに、教員の働き方改革の概要、問題点などを解説していきます。

働き方改革とは


働き方改革とは、社会問題化している長時間労働の是正や、非正規雇用の処遇格差などの課題を解決し、一億総活躍社会を実現することで労働生産性を向上させていこうとする、政府主導による取り組みです。

この取り組みを実現させるべく、働き方改革実現会議が設置されて以来、さまざまな議論が重ねられ、2017年3月28日に決定されたのが「働き方改革実行計画」です。この計画では、賃金などの処遇改善、時間・場所などの労働制約克服、キャリアの構築を3つの課題として挙げ、さらに9つのテーマに分類して改革への方針と計画が決定されています。

働き方改革実行計画で掲げられた計画は2018年に成立し、長時間労働に罰則付き上限規制が設けられた改正労働基準法とともに、2019年4月1日から「働き方改革関連法」として施行されます。

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公立校教員は働き方改革の対象外?


それでは、地方公務員である公立校の教員は、改正労働基準法を含む働き方改革関連法の適用対象となるのでしょうか?

労働基準法は、労働組合法、労働関係調整法とともに「労働三法」といわれる労働法の一部です。このうち、労働組合法・労働関係調整法は地方公務員には適用されません。また、労働基準法についても、適用されるのは一部の一般職に限られ、適用される場合も制限が設けられています。

公立校の教員は正規であれば一般職の地方公務員ですが、労使の合意が必要な労働基準法の36協定は適用されません。つまり、時間外労働に罰則付き上限規制が設けられた改正労働基準法は、教員には適用されないのです。

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教員の働き方の実態とは?


法律による長時間労働の上限規制がなかったとしても、一般的なイメージどおり、公立校の教員に過重労働の実態さえなければ、それはそれで問題ないのかもしれません。では、実際に公立校の教員は長時間労働をしていないのか?教員の働き方の実態がどうなっているのか、紹介してみましょう。

まず、過労死の労災認定基準として知られる「過労死ライン」は、発症前の1か月間に100時間以上、もしくは2〜6か月間に毎月80時間以上の時間外労働があった場合、とされています。

しかし、教員の勤務実態調査の多くは、1週間の「勤務時間」を対象にしているため、1か月間の「時間外労働」を明らかにするのは、それほど容易ではありません。そこで、これを踏まえたうえで「1週間の勤務時間」から「1週間の法定労働時間」を差し引き、それに4週間を掛けて1か月の時間外労働を割り出した調査がありました。

その結果は、小学校教員の72.9%が月80時間以上、55.1%が月100時間以上も時間外労働しており、中学校教員ではそれぞれ86.9%、79.8%にもおよんでいます。教員の声を拾ってみると、20・30代の9割が「時間内に仕事を処理し切れない」と答えており「ひどく疲れたことがあった」が9割「イライラしていることがあった」が8割に達するなど、民間企業では考えられない、教員の長時間労働の実態があることがわかります。

繰り返される教員の過労死

これだけの長時間労働が横行していれば、当然のことながら、過労死や心身疾患に陥る教員も少なくないはずです。事実、2016年度までの10年間で、63人もの教員が過労死で命を落としています。しかも、この数は労災に認定されたものだけであり、因果関係が明らかにされなかったものを含めれば、相当数の教員が長時間労働によってなんらかの健康障害を来していると考えられます。

2016年夏には、富山県の中学校男性教諭が、2017年6月には、大分県の中学校男性教諭が過労死で亡くなっており、それぞれ直前の1か月間の時間外労働が120時間、175時間だったといわれています。つまり、現在でも長時間労働を要因とした教員の過労死は繰り返し起こっているといえるのです。

なぜ教員は長時間労働なのか?


それでは、なぜ教員はこれほどまでの長時間労働を続けているのでしょうか?当事者ではない私たちには容易に想像できるものではありませんし、小学校、中学校などでも事情は異なりますが、大まかにその理由を解説してみましょう。

日本の教員はマルチタスク過ぎる?

実際の授業時間が教員の勤務時間の多くを占めているのは間違いありません。しかし、そのほかにも授業準備、採点などの成績処理、学習指導、学校行事、学級運営があるのに加え、教員の研修や保護者対応も行い、さらに、ほとんどの教員が学校の部活動の顧問を兼務しています。

登下校時の見回り、学校徴収金の管理、休み時間時の対応や校内清掃などにも教員がかかわり、問題のある生徒への対応で家庭訪問したり、行政との調整を行う場合も少なくありません。

日本のように、教員がこれほどのタスクをマルチに担っている国はほかにありません。これでは「時間内に仕事を処理し切れない」という声がほとんどなのも理解できます。なにしろ、教員が授業に費やしている時間は、勤務時間全体の3割程度でしかないのですから。

熱心な教員ほど長時間労働に

なかでも、長時間労働の大きな要因になるのが「部活動」です。放課後の練習などは当然のことながら、土日には練習試合などがあり、春休み・夏休みなどは大きな大会が続くため、休日もほとんど休めないという教員が多いのが実態です。

生徒達の熱意に応えたいという意識も働くのでしょう、朝練などにも欠かさず参加する教員も多いようです。先にも紹介した調査では「現在の仕事に働きがいを感じている」と答えた教員が9割にもおよんでおり、熱心な教員ほど「生徒のことを考えて」長時間労働になる傾向もあるようです。

教員の過重労働が表面化しにくい理由


しかし、こうした教員の長時間労働の実態は、広く世間に知られているとはいえないのではないでしょうか?実際、長時間労働の多い職種として教員が挙げられるケースは少ないといえるでしょう。なぜ、教員の長時間労働はこれまで表面化してこなかったのでしょうか?

教員に対する世間的な認識

まずひとつには、土日祝が休日であること(土曜授業を再開した地区もあり)夏・冬・春などの長期間の休日が学校に設けられていることで、教員は休日が多いと世間が思い込んでいることが挙げられるでしょう。もちろん生徒が休みでも、教員が休日を完全に休めるとは限らないのはすでに解説したとおりです。

これに加え、地方公務員でもある公立校の教員は、収入の安定した仕事であり、時間外労働をすれば、それなりの見返りとして残業代も出ているだろう、という思い込みもあるかもしれません。つまり、世間は教員があり得ないほどの長時間労働をしているとは「思ってもいない」のだといえるでしょう。

給特法の存在

もうひとつ、教員の過重労働が表面化しない、もっとも大きな理由としては「給特法」の存在が挙げられます。1971年に制定された法律である給特法は、正式に「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」といいます。

この給特法は、教員の月間平均残業が8時間だった、半世紀前の事情を反映させたものであり、ほかの公務員には適用されない特殊な法律です。具体的には、教員の部活動や採点などの成績処理、事務処理等の時間外勤務は教師の自発的なものだ、校長等による命令ではないと定義された内容になっています。しかし、いくらかの時間外労働は致し方なく発生するものだから、給与の一律4%を調整給として支給するという内容も加えられています。

つまり、いくら残業して業務に取り組んでも「教員が残業したことにならない」のに加え、いくら残業しても「給与の一律4%しか調整給はもらえない」という法律です。記録として時間外労働が認められていなければ、表面化するはずもないでしょう。

2014年6月のOECD調査結果の意味

表面化することのなかった教員の長時間労働に、あらためて注目が集まったのは、2014年6月にOECD(経済協力開発機構)が公表した「国際教員指導環境調査」がキッカケでした。この調査では、教員の勤務時間が参加国の平均で1週間38.3時間であったところ、日本は53.9時間で参加36か国中の最長時間を記録してしまったのです。

さらに驚くべきことに、国が投入する教育費のGDP比は、参加国中の最下位を記録してしまったのです。日本は、教育費を出し渋っている負担を教員に負わせているようなものだ、という実態が明らかになってしまったといえるでしょう。

教員の働き方改革とは?


2016年9月には、働き方改革の実現に向けた「働き方改革実現会議」が設置されたのを受け、教員の働き方改革に国も動き出さざるを得ませんでした。2017年4月、中央教育審議会に「学校における働き方改革特別部会」が設置され、7月の第1回部会を皮切りに、教員の働き方改革を推進する議論が交わされるようになったのです。

学校における働き方改革に係る緊急提言

特別部会による議論では、教員の長時間労働の実態は看過できず、今すぐに対策を講じるべきとの意見で一致、国家予算の獲得を念頭に、国や自治体に働きかけるべく、2017年8月には「学校における働き方改革に係る緊急提言」が出されました。要点は以下の3点です。

・校長および教育委員会は、学校において勤務時間を意識した働き方を進めること
・すべての教育関係者が、学校・教職員の業務改善の取り組みを強く推進していくこと
・国として、持続可能な勤務環境整備のための支援を充実させること

「学校における働き方改革に関する緊急対策」の公表と通知

続けて議論を重ねた2017年12月に、中央教育審議会から中間まとめが公表されたのを受け、文部科学省が「学校における働き方改革に関する緊急対策」を公表、翌2018年2月に「学校における働き方改革に関する緊急対策の策定並びに学校における業務改善および勤務時間管理等の取組の徹底について」が通知されました。

この通知では、広範に渡る教員の業務を整理し、業務改善による長時間労働是正への指針が示されているといえるでしょう。

たとえば、学校以外が担うべき業務として「登下校に関する対応」「放課後から夜間の見回り、生徒児童の補導時の対応」「学校徴収金の徴収・管理」などが挙げられており、学校の業務ではあっても教員が必ずしも行う必要のない業務として「休み時間の対応」「校内清掃」「部活動」などが挙げられています。

中央教育審議会答申

2018年12月6日には、中央教育審議会から教員の長時間労働などの解消策向けた答申案が提出され、2019年1月25日、正式に答申として取りまとめられ、ガイドラインが示されるようになりました。具体的には、以下のような内容がガイドラインに盛り込まれています。

・時間外勤務を「月45時間、年360時間」を上限とする
・自発的とされていた時間外の授業準備や部活動等の業務を「勤務時間」とする
・年単位で勤務時間を調整し、休日のまとめ取りする「変形時間労働制」の導入を認める
・教員・学校・地域がかかわる業務を整理して、担うべき仕事を明確にする

時間外勤務に上限が設定とされたこと、自発的な時間外の業務を勤務時間としたことなど、国がガイドラインとして提示したのは大きな前進だといえるでしょう。

一方、給特法でも問題になっている4%の調整給の改善ですが、こちらは財源が確保できないという理由で改正などが見送られてしまいました。なにしろ、日本国内の教員すべてに残業代をまともに支払ったら、年間9,000億円必要だといわれていますから。

教員の働き方改革は実現するのか?


それでは、中央教育審議会から明確なガイドラインが出されたことで、教員の働き方改革は実現するのでしょうか?現実的に、毎月のように時間外労働が60〜80時間前後発生している教育現場の実態を考えると、月平均30時間の時間外労働に収めるのは、容易ではないといわざるを得ないでしょう。しかも、民間とは異なり、ガイドラインでは罰則も設けられていないのです。

夏休みなどを利用して休日のまとめ取りをする変形時間労働制も、部活動のある教員には難しく、学期中に業務が集中すると、子育てや介護を抱える教員が困るという意見もあります。教員の担当する授業のコマ数を減らして分業を進めるなど、抜本的な対策が望まれますが、現時点では圧倒的に予算が足りないのが実情です。

教員の働き方改革実現に向けた提言


しかし、教員の長時間労働を是正していくには、できることからでも手をつけないければなりません。最後に、学校マネジメントコンサルタントである妹尾氏が提言する、教員の業務軽減に向けた最初のステップのうち、いくつか紹介しておきましょう。

勤務の実態を客観的に把握する

教員の出退勤に関して、タイムカードやICカードなどの客観的な方法で記録している学校は全体の3割以下です。つまり、時間外の業務は自発的なものであったため、報告や点呼・目視で出退勤を確認しているのです。これでは、現場の働き方の実態を把握するのは不可能です。

教員がどのような働き方をしているのは把握するためにも、まずは勤怠管理の基本でもある、出退勤を記録する客観的な方法を導入すべきだとしています。

首長の働き方改革への理解を求める

マルチタスクで業務をこなさなければならない、日本の教員の負担を減らすには、タスクの数を減らすのがもっとも効果的です。教員業務を分担できるように教員数を増やせないのであれば、ガイドラインでも示されている業務仕訳をもとに、関係各所に協力を求めていくのが有効です。

部活動の指導員、見回りや徴収金の管理を任せられるサポートスタッフ、生徒児童の補導時に対応する警察やカウンセラーなど、地域ボランティアを含めた各所の協力が得られるように、校長や教育委員会がリーダーシップを発揮し、地方自治体の首長への働きかけと理解を求めていくべきだとしています。

まとめ


地方公務員である公立校教員の働き方改革は、労働基準法に準じた民間のものとも、一般公務員のものとも異なる、独自のガイドラインに沿って進められていくものです。その実現に向けてはさまざまなハードルがあり、一筋縄ではいかない事情があることがおわかりいただけたのではないでしょうか?

教員の働き方改革への提言やガイドラインが提示されたことで、現場では時間外労働を控えるようにという指導もされているようです。しかし、結局は自宅で業務を続けるという実態があり、時間外労働自体が解決されたわけではありません。教育への予算増加など、ドラスティックな改革が望まれています。

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